夕凪が拳で、私の顔横の壁を叩いた。
「黙れって言ってんだろ!!
お前、うるせー…
マジうるせぇ…
そうだ… 喋れないように、してやろうか…?」
夕凪がニヤリと口の端を上げた。
目は笑っていない。
睨みつける茶色の双眼は、複雑な感情が滲んでいた。
私は何も言えなくなった。
喋れないようにしてやる…
夕凪がそう言った通り、
驚いて言葉を失っていた。
夕凪の綺麗な顔が、ゆっくりと近づいて来る。
顔を傾けているから、金色の前髪がサラリと横に流れた。
睨みつける切れ長の瞳が、アップになり過ぎてぼやけて見えた。
夕凪の吐息が、唇にかかった。
私達の唇の距離は、極わずか。


