夕凪との約束は、破ってはいけなかった。
父にどれだけ叱られても、雨の中を待ち続けるべきだった……
夕凪は壁に腕を突き立て、私を囲い、睨みつけている。
私は震える声で、謝った。
「ごめんね…
夕凪、ごめんね…
あの雨の日、
私、夕凪との約束を…」
全てを言えなかった。
「言い訳なんて、聞きたくねーよ!!」
言葉を遮り、夕凪が怒鳴ったから。
ビクッと体が震えた。
私を囲う夕凪の腕が狭まった。
「お前… スゲェむかつく。
嫌いだ。嘘つきの潮音なんか、大嫌いだ」
夕凪の一言一言に、胸が傷付けられる。
痛くて怖くて、逃げ出したくなる心を必死に宥めて、
夕凪に気持ちを伝えようとする。
「ごめんなさい!
私が悪い。分かっているよ!
分かっているけど、聞いてよ!
ねぇ、夕凪!」


