「ごめんね…
夕凪、ごめんね…
あの雨の日、私……」
ずっと、夕凪が来るまで待っていたかった。
夕凪は絶対に来ると分かっていたから、
ずぶ濡れで寒くても、待ち続けるべきだった。
夕凪は嘘が嫌い。
極端なほどに、嘘つきが嫌い。
それは…
夕凪のせいではなく、家庭事情に原因があると、私は思っている。
夕凪は、母親の兄、伯父に当たる人と二人暮らしだ。
そのおじさんは少し変わっていて、町人と関わることを拒む人。
私も数回しか姿を見たことがないし、
夕凪が家には来ないでと言うから、一度も行ったことがなく、電話もかけたことがない。
大人達は夕凪のおじさんを、
“引きこもり”と呼んでいた。
昔から、仕事もしていないらしい。
生活費は夕凪の両親から貰っていると、これも大人の噂話しで聞いた。


