涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


夕凪は西階段を上っていた。


この階段は屋上に繋がらない。


行き着く先は、荷物置場と化した踊り場だ。



その踊り場に夕凪が腰を下ろした時、私が追いついた。



普通を装い、夕凪に話し掛ける。



「ふーん、ここ、こんな風になっていたんだ。初めて見た。

変な物がいっぱいだね?
学祭で使った物かな?」




天井付近の小さな窓から陽が差し込み、

夕凪と、彼の背景の品々を照らしていた。



埃を被ったパネルや、張りぼての龍。

三角コーンに、焼きそばと書かれた旗。


きっと、秋の学校祭の備品なのだろう。



夕凪はあからさまに嫌そうな顔をする。


それでも何も言わない。


お前なんかと口をきいてやるもんか…

そんな心の声が聞こえてきそうだ。