父からの伝言を、夕凪は無視できないはず…
そう思い話した言葉に、
夕凪は「分かった」と答えてくれた。
嬉しかった。
短い一言でも、久しぶりの会話だ。
喜びの中、席に戻ると、
ちょうどホームルームの鐘が鳴り、先生が入って来た。
斜め前の席から、加奈がピースサインを送ってきた。
まだ熱く火照る頬を押さえ、私は加奈に笑顔を返した。
◇◇
それからという物、頑張って夕凪に話しかけ続けた。
返事をしてくれるのは、やっぱり父からの伝言だけで、
無視されることの方が多い。
私を避けるように、どこかへ行ってしまう時もある。
それでも諦めなかった。
そんなことが一週間も続くと、周囲の私を見る目が変わってきた。
孤立した夕凪に纏わり付く私を見て、眉を潜める人もいる。
奥手そうな顔して夕凪狙いなんだと…
ヒソヒソ陰口叩く女子もいると知っている。
そんなことも気にならないほどに、必死だった。
夕凪と元に戻りたい。
海辺で笑い合いたい。
願いは、それだけだった。


