涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


「潮音、こっち来て!」



ざわつく観客席。

司会者だけはニヤニヤしながら、
後ろに下がって待っている。



戸惑っていると、

「潮音、早く!」

と急かされた。



注目の中、人を掻き分け前に出た。


ステージ下まで行くと、強引に壇上に上げられてしまう。



私に向けてもカメラのフラッシュがたかれ、恥ずかしさに真っ赤になった。



人前に立つのは、昔から苦手。


そんな私の性格を、夕凪が知らないはずないのに。



注目を浴びて困っていた。

恥ずかしさに俯いてしまった。



「潮音、こっち向いて?」


優しい声でそう言われた。


俯いていた顔をそろそろと上げると、

穏やかな二つの瞳が、まっすぐに私だけを見つめていた。