涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


祈りを込めた指を組み合わせ、
ハラハラドキドキしながら夕凪を見つめていた。




『ゼッケンブルーのファーストターン、スプレーを大きく飛ばすーっ!

ボトルターンからの〜サードターンへ〜

これは素晴らしい!!』




スピーカーから流れる解説の声に、力が入っていた。



サーフボードの裏面がハッキリ見えるほどの鋭いターン。


力強さを表す、大きな水しぶき。



今の夕凪にとって義足であることは、何のデメリットでもないようだ。


それをカバーして余るだけの、パワーとバランス力を身につけているから。



大波を華麗にダイナミックに乗りこなす夕凪に、観客達がワッと湧いた。


義足のサーファーとしての注目より、今は演技の迫力に皆が夢中になっていた。



灼熱の太陽に照らされる海辺は、
夕凪の波乗りで、更に熱さが増した気がした。