涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


ヒソヒソと話す声が聞こえている。


クラス中の視線を一身に浴びて、ますます顔が赤くなる。



恥ずかしさに堪えながら、夕凪が見ているバイク雑誌を勝手に閉じた。



夕凪がジロリ私を睨んだ。


怖い…

でも、無視されるよりはマシ。



私は夕凪を真っすぐに見て、考えてきた言葉を言った。



「あのね、お父さんがね、

夕凪のサーフボード、そろそろワックス塗り直して、メンテナンスした方がいいと言ってたの。

みてやるから、近い内にショップに来いって」




それは無理やり作った話題だ。



私から離れても、夕凪は父には心を閉ざしていない。


2階の私の部屋には来ないけど、1階のサーフショップには顔を出している。



夕凪の家は、複雑な家庭環境で、親は夕凪に無関心だ。


だからこそ、サーフィンの師匠としてだけでなく、

夕凪は小さな頃から、私の父を慕っている。