涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


砂浜を少し歩いてから、夕凪を強引に船着場に連れていった。


ここに来るのも、随分久しぶりの気がする。



沖に長く突き出したコンクリートは、義足の夕凪にとって、

砂浜より断然、歩きやすいはず。


それでも、ますます海に近いせいか、夕凪の顔は一層難しくなっていた。



今の夕凪にとって海は、
辛いだけの存在なのだろう。


そこから抜け出して欲しかった。

救い出してあげたかった。



夕凪ならきっと、恐怖を克服して前を向いてくれると信じていた。




船着場の端まで歩き、海を見つめた。


すぐ近くで顔なじみのサーファーが、波乗りを楽しんでいた。



声を掛けて手を振る私と、
背を向ける夕凪。


サーフィンエリアは見たくないと、その背中が言っていた。