涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


 ◇◇


想い出のドロップに勇気を貰い、

翌日、思い切って夕凪に話しかけた。



朝のホームルーム前、夕凪は一人、バイク雑誌を見ている。



夕凪の机の前に立ち、

「おはよう」と声をかけた。



緊張で手が汗ばんでいた。

顔は真っ赤で、胸はドキドキ煩かった。



夕凪は驚いた顔して私を見たが、それは一瞬だけ。


何も言わず、視線を雑誌に戻し、無視しようとする。



夕凪よりも驚いていたのは、クラスメイト達だ。



同じ中学で本当は仲がいいと、
一時噂されたが、

その話題はすぐに消えた。


会話のない私達に、その噂は嘘なのだと、クラスメイト達は結論づけていた。



私は真面目で大人しい。

夕凪は外見上、不良っぽい。



二人は別の世界で生きている。
そんな風に見えるのに、

突然私が夕凪に話しかけたから、教室はザワザワと騒がしくなった。