涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


夕凪は背を向けて寝そべったまま、こっちを向かない。


その背中から、意外な答えが返ってきた。



「無理だよ」



驚いて戸惑っていた。


サーフィンを失い、あんなにも辛そうだったのに、

なぜ始める前から諦めるのか。



夕凪は淡々と説明した。



「その人は、足首の上10cmからの切断と書いてあった。

膝は自前ってことだよ。


俺は膝関節がない。

サーフィンはバランスのスポーツ。膝がどれだけ大事か、潮音にも分かるだろ?」



「で、でも……」



「もう一つ言うなら、その人はロングボードで、俺はショートボードが専門。

ロングの方が断然安定性がある。


その大会のスコア表を見たら、平均6.4点だった。
そんな低い点数で勝ち上がって優勝なんて、マグレだね。

他の人が余程、波に恵まれなかっただけじゃないか?


俺よりずっと有利な条件で、それしか点数を出せないなんて、

義足でサーフィンするのが、いかに難しいかということだよ。


ぶざまなライディングは見せたくない。

もうサーフィンは、無理なんだ……」