夕凪を…… 東京に……?
驚いて息が止まった。
母親がこっちに来て夕凪の面倒をみるのではなく、夕凪を連れていく気だ。
夕凪のこれからの人生を、ずっと東京で……
予想外の言葉に酷く驚いた後は、強い焦りが生まれた。
最先端の治療が受けられるとしても、家族がいるとしても、
東京に連れて行かれるのは困る。
夕凪のいない毎日に、私が堪えられない。
それまでビクビクしながら親子の会話を聞いていたけど、
焦りから勢いよく立ち上がった。
膝に乗せていた高級プリンが箱から飛び出し、床に散らばった。
慌てて母親の横に駆け寄り、頭を下げて頼み込む。
「お願いです、夕凪を連れて行かないで下さい!
夕凪と離れるなんて……
そんなの絶対に嫌です!」


