「あなたは、夕凪の彼女なのかしら?」
棘のある声で、そう聞かれた。
そうだと答えたのは、私ではなく夕凪。
「潮音は、俺の一番大切な人。
入院中もずっと世話してくれています」
まだ入院二日目で、夕凪が言うほどお世話できていない。
看護師さんが全てやってくれるから、
お世話するというより、ただくっついているだけ。
「潮音さん」
名前を呼ばれた。
俯いている顔をそろそろと上げる。
夕凪の母親は、口元に笑みを浮かべていた。
その笑みは決して好意的なものではない。
目は笑っていないから。
彼女は「息子の世話をありがとう」と、
一応のお礼を言った。
その後、思いがけない言葉を聞いた。


