涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


「ゆ、夕凪のお母さん、あの……」



母親は手を止めて、私を見た。


何となく敵意を感じる視線だ。


なぜ他人の私がいつまでもこの場にいるのかと、責められている気がした。



怖いけど、一度話し掛けてしまったので、言葉を続ける。



「あの…… 夕凪は梨が食べられません。

りんごとミカンは食べるけど、他の果物は全般的に苦手で……」




夕凪は食べ物の好き嫌いが激しい。

野菜も苦手な物が多い。



うちで良く一緒にご飯を食べるけど、

母が無理やり苦手な野菜を食べさせようとするから、結構大変だったりする。



夕凪の食べ物の好みを、一緒に暮らしていない母親は知らなかった。



母親が言う。



「梨、嫌いだったの……
ごめんなさいね。果物は好きじゃないのね。

それなら、こっちがいいわね。
プリンも買ってきたのよ?」