母親はベッドサイドに歩み寄り、
話し掛ける。
「そんなこと言わないでよ……
お母さん、凄く心配しているのよ?
病院から連絡もらって、心臓が飛び出すくらい驚いたんだから。
体はどうなの?まだ痛むの?
何かして欲しいことはない?」
母親は心から心配していた。
息子の途切れた左足を見て、辛そうな顔をしていた。
夕凪の顔に触れようと、手を伸ばす。
夕凪はその手をかわし、
「事務手続き以外、して欲しいことはありません」
と冷たく答えた。
拒絶された手を母親は握りしめて、
静かに下ろした。
さっきまでの私達二人きりの時と違い、今は病室の空気がピリピリしていた。
夕凪がこんな風になってしまった原因は分かっている。
母親が幼い夕凪を海辺の田舎町に残し、
「迎えに行く」と約束したのに、行かなかったせいだ。


