涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


気が引けたけど、夕凪に強く言われて、ベッドサイドの椅子に座った。



この部屋に、椅子は一つだけ。

母親が立っているしかないのは、
心苦しい。



夕凪は母親に軽く頭を下げ、淡々と言った。



「呼び出してすみません。
どうしても親のサインが必要と言われたので。

東京からわざわざ来てもらい、迷惑かけました。

立て替えてもらった治療費は、いずれ働いて返します。

働けるまでには、数年かかりそうですが」




その物言いに驚いて、夕凪の顔をまじまじ見た。


実の親なのに、来てもらったことを謝り、治療費も返すつもりだなんて……



こんなにきちんと敬語で話す夕凪も初めて。


私の親には敬語を使わず、砕けた話し方。

先生にも年上のサーファー仲間にも、ここまで固い話し方はしない。



夕凪の、母親に対する壁を感じた。

決して歩み寄るものかと突っ張る、強固な壁を……