涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


看護師さんではなく、見知らぬ中年女性が立っていた。



ライトブルーのスーツを着て、高そうなハンドバッグを持った、身なりの良い女性。



夕凪が「母さん」と呟いた。



その人は離れて暮らす、夕凪の母親だった。


事故の知らせを聞き、翌日の今日、遠くから駆け付けたのだろう。



彼女の視線が私に向いて、スッと目が狭められた。


重傷の息子のベッドに乗る女を、
良く思わなかったのだろう。



慌ててベッドから下りて、お辞儀した。


出ていた方がいいと思い夕凪に背を向けると、腕を強い力で掴まれた。



「ここにいて」

夕凪はそう言った。



「でも……」


「潮音にいてもらいたい。
その椅子に座っていて」