椅子を鳴らして立ち上がり、
震える声で聞いた。
「ゆ、夕凪は……?」
「命は取り留めました」
そう答えが返ってきた。
夕凪は、生きている……
緊張から一気に解き放たれ、
へなへなとその場に座り込んだ。
その後は、心にどっと喜びが押し寄せる。
「良かった……
夕凪…… 本当に良かった……」
今まで気丈に振る舞っていた母が、泣き出した。
父は私の頭をくしゃくしゃと撫でてから、泣いている母を抱き寄せた。
夕凪の生還を喜ぶ私達に対し、
医師はなぜか固い表情を崩さない。
「命に問題はないのですが……」
言い難そうに切り出された言葉に、喜びが中断された。
告げられたのは、予想外に重い現実。


