涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


 ◇◇


救急車の中で、夕凪の名前を叫び続けた。



心肺蘇生されている姿も、
赤く染まった体も、

死んだように青い肌も、
震えるほどに恐ろしくて、


夕凪を失うかも知れない恐怖に、
気が狂いそうだった。




病院に着いてからのことは、よく覚えていない。


私も擦りむいた傷を、あちこち手当てされた気はする。

腕や足に、包帯が巻かれているから。



記憶があいまいなのは、心が闇をさ迷っていたせい。



真っ黒にうねる嵐の海に、漂流していた。

陸は見えない。

太陽も月もない、暗い海。


私は小さな木片に掴まり、波に揉まれていた。


木片は頼りなく今にも沈みそうで、黒い海が私を引きずり込もうとしている。