涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


頬を叩いて必死に呼び掛けると、
夕凪がうっすら目を開けた。



ぼんやりした目の焦点が私に合うと、掠れた声で、

「潮音、無事か……?」

と聞かれる。



夕凪の方がずっと重傷なのに、
一言目にそう言われ、涙が溢れた。



「私は大丈夫だよ……
夕凪が守ってくれたから……何ともないよ……」




夕凪の顔に、涙がポタポタ落ちて行く。


真っ青な顔した夕凪が、私の無事を確かめ、少しだけ頬を緩めた。



救急車のサイレンが近付いてきた。


目の前に白い車体が止まる。


それと同時に夕凪が目を閉じ、

私の腕の中で、首がカクンと垂れた……




「夕凪? 夕凪っ!?
やだっ 目を開けてよ!!

夕凪っ!! いやああーーっ!!」




――――……