涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


ハッとして身を起こす。


目にした光景に、自分の体の痛みは、瞬時に忘れてしまった。



力なく横たわる夕凪の体の下に、
血の池がジワリジワリと広がっていた。



「夕……凪……?」




固まる私の周囲には、通行人や運転手達が集まっていた。



「バイク退かさないと!」


「まずはトラックだろ!
誰か、早くジャッキ持って来い!」


「そっち、そっと持ち上げて!」



集まった人達は、夕凪を助けようとしていた。



夕凪の下半身は、バイクの下敷きになっている。


そのバイクをトラックの前輪が乗り上げ、押し潰していた。




目の前でトラックが退けられ、
バイクが持ち上げられた。



夕凪の体の下に大きな血溜まりを作っているのは、

足元からの出血だった。



真っ赤に染まった夕凪の下半身。

左足が、有り得ない方向に曲がっていた。



私の中に、激しい恐怖と焦りが押し寄せる。



目を閉じてグッタリしたままの夕凪を、夢中で腕の中に掻き抱いた。



「夕凪…… 夕凪…… 夕凪っ!!
お願い、目を開けてよ!!」