眼鏡の奥の加奈の瞳は、とても優しかった。
泣きそうな私の口に、自分の海老フライを入れてくれた。
その箸はそのまま、私のお弁当箱へ。
「これにしよっと!」
そう言って加奈は、花形の卵焼きを取って食べている。
「甘くて美味しい!
潮音のお父さん、凄いよね!
うちのお父さん、目玉焼きさえ作れないよ」
貰った海老フライを飲み込んでから、
縋るように加奈に聞いた。
「大丈夫だと思う?
嫌いだと言われたのに?」
「大丈夫!大切な幼なじみなんでしょ?」
「うん…」
夕凪は大切。
家族と同じくらい…
いや、最近は家族以上に私の中で存在が膨らんでいる。
毎日、夕凪のことを考える。
今の状況が悲しくて苦しくて、何とかしたいのに、
勇気がなくて泣いているだけ。
それじゃ駄目だと、分かっているのに…


