夕凪は両足を地面に押しつけている。
摩擦で何とか減速させようと、靴底が焦げるくらいにアスファルトに擦りつけている。
次の交差点が迫っていた。
信号は赤……
それを目にして、恐怖に震えた。
止められないバイク。
交通量は少なくない。
このまま突っ込めば、間違いなく大事故になる。
夕凪に回す腕に力がこもる。
目を開けていられなくて、ギュッとつぶった。
夕凪はあちこちバイクを操作しながら、精一杯足掻いてくれる。
絶対絶命のこの場面で、
「潮音だけは守るから!」
と強い口調で言われた。
その言葉で、閉じていた目を開けた。
怖くて堪らないけど、流れる景色を見なければと思った。
私だけ守られてばかりなのは嫌だ。
夕凪と同じ立場でいたい。
恐怖も、もしも死んでしまうとしても、
夕凪と一緒がいい。


