涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


バイクは来た時とは違う道を走っていた。


この道がどこなのか分からないけど、

夕凪が言うには学校までの近道らしい。



バイクのエンジンは止まらずに動いてくれて、

どうやらこのまま、学校まで帰れそうな気配だった。



そう安心した矢先に、アクシデントが発生した。


片道一車線の市道。
なだらかな下り坂を走行中、


「ヤベェ……」

と夕凪が呟いた。



目の前には黄色信号の交差点。

当然止まるものだと思ったのに、
夕凪が慌ててスピードを上げ、交差点を通過した。



壊れかけのバイクに、ノーヘルメットの私達。


夕凪も危険性を自覚して、それまではゆっくり安全運転だったのに、

なぜ急いで交差点を渡ったのか……



良くない予感を感じた。

急に無口になった夕凪に、恐る恐る尋ねた。



「夕凪、もしかしてエンジンの調子が悪いの?」