倒された夕凪のバイクが、ガンガン蹴られていた。
座り心地のいい黒いシートは破かれ、中のクッション材が見えている。
男の一人が鉄パイプを振り下ろし、ヘッドライトが砕けて飛び散った。
「お願い、やめてっ!!」
男達を押し退け、バイクにしがみついた。
バイクへの攻撃が止み、代わりにケタケタ笑う声がした。
「何コイツ、コスプレしてんの?
馬鹿じゃね?」
「メイド服って、ねぇよなー。
マジ笑えるー」
「そう?俺はイケルけど。
メイドちゃん、顔見せろよ。
泣きながら、やめて下さいご主人様〜って言ってみ?」
3人目の男の言葉で、ギャハハと笑いが起こる。
夕凪のバイクにギュッとしがみついたまま、
心の中に怒りがフツフツ沸いてきた。
このバイクを買う為に、夕凪がどれだけ頑張ったことか。
放課後のガソリンスタンドのバイトで、帰ってくるのは夜遅く。
夏休みは海の家と掛け持ちで、
働き通しだった。
このバイクは夕凪の、半年分の努力の結晶。
それを嘲笑い、軽々しく壊すなんて許せない。


