これを作ってくれたのは、母ではなく父だ。
派手な見た目のプロサーファーの父は、
こんなメルヘンチックなお弁当を作れてしまう。
父が料理するのは、私のお弁当だけ。
母が、
「ケンちゃんは、潮音を可愛がり過ぎ!」
と、よく文句を言う通り、私は父に溺愛されていた。
嬉しいような、恥ずかしいような…
そんな気持ちでお弁当を食べ始めた時、
視界の端を、金色の髪が通り抜けた。
ハッとして、顔を上げた。
夕凪がパンの入ったコンビニ袋を手に、
一人で教室を出て行く所であった。
私の不安は的中していた。
夕凪は今、クラスで孤立している。
上條君が私を庇うように夕凪に意見した日から、
夕凪の周囲は変わってしまった。


