涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


手の中の紺色メイド服は、佐伯さんに投げ捨てられ、踏み付けられた。



戸惑っていた。

この状況を、どう理解すればいいのだろう。



佐伯さんは泣いていなかった。

パレードに出たくもない。


それならなぜ、後から登校してきたのか。

一人踊り場の窓から、グラウンドを見ていたのか……



佐伯さんの考えを読めず、ただ固まっていた。


そんな私が可笑しいらしく、
彼女は声を上げて笑う。

それから言った。



「パレードに誘ってくれてありがとう。

いい人ぶって、そんなところもムカツク。

ムカツク朝比奈さんにイイモノ見せたくて、ここまでおびき寄せたんだ。

私がここにいる理由、分かった?」




佐伯さんは、私をここに連れて来たかった。

泣いているふりして、おびき出し、

見せたい物とは……



佐伯さんが窓を開けた。

涼しい風が吹き込み、彼女の茶色の髪を揺らした。


窓の下を指差し、ニッコリ笑っている。



恐る恐る、窓辺に寄る。


下を覗くと、真下は駐輪場だった。



目を見開いた。

夕凪の青いバイクを、3人の男子高校生が囲んでいるから。