「佐伯さんっ!」
彼女の背中に声をかけた。
すると彼女は、振り向かずに走り出した。
私から逃げて駆け込んだ先は、
2年生のクラスだった。
泣いている姿を見られたくないのかも。
それでも、追い掛けずにいられない。
佐伯さんと一緒にパレードを。
クラスの仲間として、最後まで一緒に文化祭をやりとげたい。
ドアを開けて2年生の教室に入る。
模擬店で喫茶をやっていたこの教室は、
机にテーブルクロスが掛けられ、
壁が可愛らしく装飾されていた。
佐伯さんは、窓際にいた。
顔を隠し肩を震わせ、背を向けている。
私はゆっくり歩み寄り、彼女の一歩後ろで足を止めた。
「佐伯さん、あの……
一緒にパレード出ようよ。
このメイド服、着たいと言ってたよね?
着替えて一緒に行こう?
まだ間に合うから、
大丈夫だから、泣かないで……」
半歩距離を詰める。
泣いている彼女の肩に、そっと手を掛けた。
その手は振り払われた。
クルリと向き直った彼女は、可笑しそうに笑っていた。
驚く私に、彼女が言う。
「泣いていると思ったの?
馬鹿じゃない?
パレードなんて、どうでもいいに決まっているじゃない」


