涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


 ◇◇◇


5月末、初夏を感じる暖かい風が吹いていた。


ブレザーを脱ぎ、長袖ブラウス1枚でちょうど良い気候。

軽装の生徒たちが増えてきた。



昼休みの教室は賑やかだ。

それぞれ仲の良い子と机を付けて、お弁当を広げる。


私も加奈と一緒に、お昼を食べようとしていた。



加奈はワクワクした目を、私のお弁当箱に向ける。


私のお弁当の中身に期待の目を向ける理由は、“キャラ弁”だから。



蓋を開けると、今日のご飯はうさぎ型。


薄ピンクのご飯に、ハムやノリで顔が作られている。


うさぎの周りには、花形の卵焼きや、人参やピーマンの蝶が飛び、

殻を被ったヒヨコみたいな、うずらのゆで卵が可愛いかった。



夢一杯でメルヘンなお弁当を、

「今日も可愛いね!」
と加奈が褒めてくれた。



私は苦笑い。


もう高校生なのに…
と言いたい気持ちになる。