涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


上條君と夕凪が、机数個を挟んで睨み合った。


その雰囲気に、誰も口を挟めない。



上條君が言う。



「貝原って、何様のつもり?

格好つけて、スカしてんのは勝手だけど、

人を傷つけるのは止めろよ。

俺、そういうの許せないから」




私はどうしていいのか分からず、オロオロするだけだった。



夕凪は無言で立ち上がる。


ホームルーム開始のチャイムが鳴っているのに、教室を出て行ってしまった。



夕凪が出て行くと、クラスがワッと湧いた。


夕凪に寄ってくる子もいれば、やっぱり心良く思わない子もいるみたい。



目立つ存在の夕凪に、臆せず意見をぶつけた上條君は、たちまちヒーロー扱いだ。



みんなは「スゲー!」と口々に褒めているけど、


私は…

嬉しくなかった。



夕凪が悪者にされた気持ちで、悲しくなる。


これから孤立してしまうのではないかと、不安になる。



それでも私には、クラスみんなに意見する勇気がなかった。



弱虫な自分が嫌になる…



夕凪に嫌われてから、前よりもっと臆病になった気がした…




――――…