「陰でコソコソ、汚い真似しやがって……」
夕凪が吐き捨てるように言った。
その声には侮蔑の色が混ざっていて、私の体が強張った。
「違う」と言わなければならない。
陰で上條君と付き合っていない。
コソコソ汚い真似もしていない。
そう説明しないといけないのに、
震えるだけで、夕凪を見ることが出来なかった。
佐伯さんは少し離れた場所にいる。
廊下の壁に背をもたれ、私達を見ていた。
緩くウェーブの付いた茶髪をクルクルと指に巻き付け、
楽しそうな顔して傍観している。
「マジで、最低だな……」
夕凪の声が、横から聞こえた。
私の後ろから横に出て、そのまま背を向け歩いて行く。
また、怒らせてしまった。
今度こそ、終わりかも知れない。


