涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


上條君との2枚は、撮られていることに全く気付かなかった。



思い返して見れば、教室の電気がつく直前に、

眩しい光を浴びた気がする。


あれは、カメラのフラッシュなのかと、

今やっと気付いた。



写真の角度から考えて、カメラがあったのは、段ボールで作った壁側だ。


壁にわざわざ穴を開けて、シャッターチャンスを狙っていたのかと思うと、

佐伯さん達に恐怖を感じた。



その恐怖よりも、今強く心を支配しているのは、

焦る気持ち。



「見るな!」と怒って手を伸ばす上條君を、

面白がる男子達が押さえている。



私は写真の前で、震えていた。



「へぇ、そういうことか……」



真後ろに、低く冷たい声がした。



夕凪の長い腕が伸びてきて、
2枚の写真を乱暴にはぎ取った。



ビリビリッと大きな音が背後で聞こえた。


怖くて後ろを向けないけど、
夕凪が写真を引き裂いたみたい。