その時、廊下の向こうから声がした。
「理沙ー!
準備できたよー!」
佐伯さんを呼んだのは、渡辺さんと山下さん。
呼ばれて佐伯さんは、駆けて行った。
文化祭係の3人が集まり、廊下の真ん中で何かをヒソヒソ相談し、楽しそうに笑っていた。
3人の視線が、急に私に向いた。
ビクリと体を揺らしてしまう。
「どうした?」
夕凪に顔を覗き込まれた。
「う、ううん、
何でもない……」
見られただけなのに、なぜか強い不安に襲われる。
人前なのも忘れ、夕凪の腕にギュッとしがみついてしまった。
3人がクラスメイトを掻き分け、真ん中に立つ。
佐伯さんの良く通る声が、廊下に響いた。
「みんな、注目ー!
準備と本番で写した、文化祭の写真を貼り出すからー。
欲しい人は言ってね。
1枚50円でプリントしてあげるー」
賑やかさが増した。
「写真撮ってたの?」
と驚く声や、
「こいつら稼ぐ気だー」
と笑う声も聞こえる。


