私は何も言えなかった。
教室は妙な空気になってしまい、居心地が悪い。
みんなの視線が痛くて、
それ以上に夕凪の言葉が痛くて、
俯いて手を握りしめていた。
そこに、クラスメイトの大きな声が響いた。
「貝原、何言ってんの?
朝比奈さん、めっちゃ可愛いじゃん。
マジないって言葉が、ないよ。
お前さ、視力悪い?それとも、女の趣味が悪い?
違うか、性格が悪いのか!」
それを言ったのは、上條君という男子。
サッカー部で唯一の、一年生レギュラーだと聞いた。
女子にもかなり人気があるらしい。
夕凪とは別グループにいる彼も、クラスで目立つ存在。
明るくて、正義感が強そう…
私のことを可愛いと言ってくれたのは、
上條君の正義感からくる、フォローの言葉だと思っていた。


