夕凪に睨まれて、女子達は黙り込む。
皆、戸惑っていた。
急に冷えた空気を和ませようと、男子の一人が慌てて言った。
「お前、言い方キツイよ〜
女の子嫌いか?
それなら、その顔いらないだろ。
いいよな〜モテ顔、取り替えて欲しいよ〜」
もう一人の男子も言った。
「アレなんじゃね?好きな女いるとか?
分かった!朝比奈さんだ!
最近、お前の中学の奴と知り合ったんだけどよ、
夕凪と朝比奈さん、すげー仲良かったらしいじゃん?
隠れて付き合ってたり?」
冗談ぽく言った言葉に、クラス全員の視線が私に向いた。
ザワザワし出す教室。
ヒソヒソと声を落とした会話が聞こえてくる。
「朝比奈さんと貝原君、同中なの?」
「仲良かったんだ。
話しているところ、見たことないけど」
「二人って、種類違くね?」
困っていた。
こんな風に注目されるのは苦手だ。
クラス中の視線が私に向く中、夕凪だけは私を見ていなかった。
夕凪が、ノートを机に叩き付ける。
パンッと乾いた音が響き、教室の騒がしさが止んだ。
私に代わって、注目されたのは夕凪。
彼は誰に言うともなく、冷たい声でこう言った。
「あいつだけは、マジないから」


