慌てる気持ちは、行動に出る。
「上條君、待って!」
井戸を跨いで出ようとしたけど、
着物だという意識が飛んでいた。
右足は井戸を跨げず、縁に引っ掛けてしまう。
体勢を整える暇もなく、佐伯さんに背中をドンと押されてしまった。
「あっ!」
と声を上げ、体が前のめりに倒れていく。
上條君が反射的に振り向いた。
受け止めようとしてくれるから、彼まで巻き込んでしまった。
ドサリと二人、床の上に倒れ込む。
体の下には、上條君。
私が押し倒した格好になってしまった。
慌てて、顔を上げた。
「ごめんね!
大丈夫? どこか痛い」
「痛いよ……」
「えっ!?
どこ? 頭?背中? 見せて?」
「心が痛い……
諦めなきゃいけない相手を、体の上に乗せているのは、痛いよ。
下りて貰えると、助かる」
「ご、ごめんなさい!」


