話し声と懐中電灯の光が、遠ざかって行く。
この井戸には何もないと、判断したみたい。
辺りは再び暗闇に包まれる。
上條君はまだ、私の首筋に唇を当てていた。
頭に浮かぶ夕凪の顔と言葉に後押しされ、
震える声で呟いた。
「お願い…… やめ……」
「やめて」と全てを言わない内に、パッと眩しい明かりに照らされた。
眩しさに目をつむる。
そろそろと目を開けると、教室の電気がつけられていた。
後数分で12時になる。
次のお化け役と、交代の時間だった。
上條君がやっと唇を離してくれた。
私を閉じ込める腕からも解放された。
二人は無言のまま、立ち上がることも出来ずにいた。
急に誰かに、井戸の中を覗き込まれた。
ハッとして上を見ると、佐伯さんだ。
「交代。早く出なさいよ」
「う、うん」


