困っている気持ちは、上條君に伝わっていた。
「ごめん……」
耳元で謝ってくれるけど、腕の力を緩めてくれない。
「もう少しだけ、このままで……」
私を腕に閉じ込めたまま、お願いされてしまった。
心が大きく波打つ。
夕凪に対して悪いことしていると、焦り始める。
「やめて」と言い難い雰囲気。
でも、言わなければいけない。
心の中で、葛藤すること数分。
困る私に、救いが現れた。
次のお客さんが、通路の向こうからやってきたのだ。
ホッとして、上條君に言った。
「お客さん来たよ。
立たないといけないから、腕を……」
上條君の腕を外そうとした。
でも、外れない。
「上條君? お客さんが……」
ますます強い力で抱きしめられ、
身動きできなかった。


