涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


そんな感じで、お化けをやること40分。

井戸の中で上條君の様子が、少し変わった。


時々大きく息を吐き出し、苦しそう。

首筋に掛かる彼の息が、今までより熱く感じる。



「上條君、どうしたの?
具合悪いの?」



「いや……大丈夫。
あと少しで終わるから、何とか頑張れると思う」




そう言われて、やっと気付いた。


上條君は無理な姿勢を長時間続けているから、苦しいのだと。



お客さんが来る度に立ち上がる私はいいとしても、

二人目のお菊さん役の上條君は、あまり出番がなかった。


上條君が出る前に、お客さんが逃げてしまうから。



開始から40分経ち、上條君が立ったのは2回だけ。


後はひたすら井戸の中で、

私になるべく付かないようにと、無理な姿勢を保ち続けているのだ。