涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


佐伯さんが出て行き、

「お客さん入れるなー!」

と入口係の声がした。



もうどうあっても、この体勢でお菊さんをやるしかなかった。




11時台のお化け屋敷がスタートした。


最初のお客さんが、お化けに遭遇したようで、

入口付近から女子の悲鳴が聞こえた。



「キャーキャー」と怖がる声が、少しずつ井戸の方へ近付いてくる。



私の胸がドキドキ煩く鳴っていた。


お化け役に緊張しているのか、

背中にくっつく上條君に緊張しているのか、分からない。



後ろに声がする。



「潮音ちゃん、ごめんね。
これでも精一杯、体を離そうとしてるんだけど……」



その努力は感じられた。


背中に上條君の胸が当たっても、顔や腕、下半身は井戸に寄せて、

付かないように頑張ってくれている。



「えっと、私は大丈夫だよ……
あの、お化け役に集中しないとね……」



「あ、ああ、そうだよね……」