「ほぅ…」とため息をつき、しばらく見惚れてから、
砂の上に座り込む。
砂をすくい、サラサラと指の間から落としてみた。
入学式に「嫌い」と言われてから、一ヶ月が経っていた。
あれから一度も口をきいてくれない。
折角同じクラスになれたのに、二人の距離は離れて行く一方だ。
以前もこうして、夕凪の波乗りをよく眺めていた。
「上手だったよ」
「今日はいい波が来てるね」
そんな他愛ない感想を言ったり、手を振り合ったり…
早朝のひと時は、楽しい時間であったのに。
今は…
手を振っても、きっと無視される。
名前を呼んでも、来てくれない。
それが分かっているから、黙って帰るしかない。
砂の上から立ち上がった。
夕凪は沖に向けて、パドリング中。
私からどんどん遠ざかって行く。
30分夕凪を眺めて、肩を落とし家に帰った。
学校に行く支度をしなければならないけど、それも気が重かった。


