夕凪は両親から、この町に置き去りにされたような物だった。
彼の両親は離婚調停中、
「必ず迎えに来る」と約束し、
6歳の夕凪を親戚に預けた。
迎えに来ると信じていたのに、その約束が守られることはなかった。
幼い心は、どれだけ傷付いたことだろう……
今まで意識したことがなかったけど、
傷付いた夕凪を癒したのは、もしかすると私かも知れない。
夕凪と笑い合って過ごす中、
私が彼をこの海に繋ぎ、居場所を作っていたのかも知れない。
“潮音だけは裏切らない”
夕凪はそう信じてくれたのに、
あの雨の日、擦れ違ってしまったんだ。
夕凪は謝ってくれた。
私は頷いて、彼を許した。
辛かったのは私だけじゃない。
もしかすると、夕凪の方が苦しかったかも知れない。


