夕凪は怒っていないのだと、やっと気付いた。
傷付けるつもりも、ないことも。
それは感じられたけど、どうして泣いているのか分からない。
そろそろと腕を解いて、顔を出した。
「夕凪……?」
恐る恐る、問い掛けてみる。
切れ長の二重瞼が、ゆっくりと開いた。
涙が私の頬に、また落ちた。
夕凪は怯えていた。
私以上に。
震える唇が、「ごめん」と形作るけど、声にならない。
「…… どうして謝るの?
夕凪? 言ってくれないと、分からないよ……」
夕凪が私の上からゆっくり下りた。
私も砂の上に、身を起こす。
夕凪はさっきの私みたいに、震えていた。
何かを伝えようとしているけど、
口から漏れるのは、言葉にならない嗚咽だけ。
どうしてあげたらいいのか分からなくて、困ってしまう。
戸惑いがちに腕を伸ばして、夕凪をそっと抱きしめてみた。
私の背にも腕が回された。
壊れそうなほど強い力で、抱き返された。


