それでハッと我に返る。
足を一歩後ろに引いた。
夕凪はそれを見て、唇を強く噛み締めた。
顔を歪めて、苦しそうに私を見る。
じりじりと後退り、私は店から飛び出した。
「潮音っ!!」
後ろに、夕凪の大声が聴こえた。
また怒らせてしまったと思っていた。
富倉で会ったのは偶然だけど、
後を付けたように思われたかも知れない。
これ以上、嫌われたくない。
心は既に傷だらけで、新しい傷に堪えられそうになかった。
夕凪の前から、消えなければ……
そんな思いに動かされ、
走って走って、
海辺まで逃げて来た。
小石の転がる道を走り抜け、砂浜に足を踏み入れる。
「潮音っ!!」
すぐ後ろに、夕凪の声を聞いた。
夕凪はなぜか私を追ってきた。
砂浜を逃げる私の腕は、長い腕に捕まえられた。
強い力で引っ張られ、砂の上に転んでしまう。
夕凪も、私ともつれるように砂に転んだ。


