富倉のおばちゃんは、シワだらけの笑顔を向けてくれた。
本当のおばあちゃんみたいで、温かい顔。
せっかく話しかけてくれたのに、それに返事が出来なかった。
おばちゃんが話していた相手は、
夕凪だった。
今日はバイトに行かなかったのか、学校帰りの制服姿。
私も買おうとしていた海色ドロップを、夕凪が摘んでいた。
コンッと音がして、彼の指先から飴玉が落ちた。
古く傾いた床板を、ゆっくり転がり始める。
夕凪は、私以上に驚いた顔をしていた。
富倉のおばちゃんが私にしきりに話しかけるけど、
その言葉は耳に入らない。
アイスクリームのショーケースや駄菓子の棚を挟んで、
私と夕凪が見つめ合っていた。
夕凪の手から離れた海色ドロップは、あちこちぶつかって、
私の爪先にコツンと当たった。


