ふいに、首筋に冷たい感触が。
「ひゃあっ!」と驚き、首をすくめた。
振り向くと、母が笑って立っていた。
首に押し当てられたのは、氷水で冷やしたペットボトルのスポーツ飲料だった。
母はペットボトルを二本、私に手渡した。
「これ、二人のね」
「二人……?」
「潮音と夕凪。
夕凪、波乗りしに行ったんでしょ?
渡しておいで」
強制的に、クルリと体の向きを変えられた。
ドンと背中を押され、足が一歩二歩、前に進んだ。
「潮音、ファイト!」
母の励ましにも背中を押され、私は歩き出す。
ゆっくりとした歩調は、早足になり、
やがて、砂浜を駆け出した。
夕凪と一緒の夏が終わってしまったと淋しく思う一方で、
まだ夏を終わらせたくないと思う気持ちもあった。
夕凪との距離が少しも縮まらないまま、終わらせるなんて……
そんなの嫌だ。


