「あいつ… 何であんなに素直じゃないんだろう…」
上條君が、そう呟いた。
水を掛けられて、怒ってはいないみたい。
怒るより呆れたような顔している。
浜辺で遊んでいたクラスメイト達が、上條君を呼んだ。
「上條ー!
俺ら帰るけど、お前どうする?」
気付けば西の空は真っ赤に燃え、海面もオレンジ色に変わっていた。
上條君が立ち上がる。
「俺も帰る!」
そう大声で言ってから、私を見た。
「返事は始業式の日に聞かせて。
夏休みの間に、ゆっくり考えて」
「うん…」
すぐに返事を求められなかったことに、ホッとしていた。
猶予期間は私の為だと思ったけど…
違うみたい。
夕凪は一人、波乗りを続けている。
上條君はそれを見ながら、呟いた。
「潮音ちゃんの幼なじみだから、ズルイと言ったけど…
俺もズルイよな…」
「え?」
「返事を始業式にしたのは、夏休みの間も、俺のこと考えて欲しいからだよ。
貝原と一緒に働いていても、きっと俺を思い出すよね?
ズルイのは分かってる。
俺も…必死なんだ…」
上條君が自嘲気味に笑った。
「またね」と言って、私を残して駆けて行った。
――――…


