日が傾いてきていた。
少しだけ赤みを帯びた空に、上條君がポツリ呟いた。
「人魚かと思った…」
首を傾げて彼を見る。
上條君は少し笑った。
「飛び込んだ潮音ちゃんが、中々上がって来ないから、
慌てて潜ったら…
人魚みたいに自由に泳いでいて…
綺麗で、しばらく水の中で見惚れてた。
まだ、心臓がドキドキしてる…」
上條君は、いつも褒めてくれる。
私もいつもの通り、返事に困る。
こういう雰囲気に慣れることは、ないみたい。
それと、つい目を逸らしてしまったのには、もう一つ理由が…
泳ぎながら考えていたのは、夕凪のこと…
それが後ろめたくて、サーファーで賑わう波間に視線を向けた。


