その言葉が胸に突き刺さる。
鋭いナイフで一突きにされたような痛みを感じ、
制服の胸元を握りしめた。
あの雨の日、最後まで夕凪を待てなかったことを謝ろうと思っていた。
謝って仲直りして、大切な話しも聞きたいと…
そんな甘い考えは、「嫌い」の一言で崩されてしまった。
青ざめて、立ち尽くす。
夕凪は私に構わず、校舎の中へ消えてしまう。
始業の予鈴が聞こえた。
大勢の生徒達が、慌てて校舎に駆け込んで行く。
私も行かなければならないのに、足が動いてくれない。
頭の中に、夕凪との楽しかった日々が蘇っていた。
――――
――――――
「潮音!小っこいカニー!」
「わぁ!可愛い!」
「ヤッタ、俺の勝ち」
「えー、ずるいよ。私の時は波が高かったもん。
夕凪、もう一回!」
「何度やっても同じだよ。
潮音じゃ俺に勝てないから、アハハッ」
――――――
―――
輝く海を背景に、私達はいつも笑い合っていた。
楽しかった日々は、そんなに遠い昔じゃない。
ついこの間まで、確かに海辺にあったのに…
脳裏に描いた二人の笑顔が、
砂山のように崩れて、波にさらわれてしまった。
「夕凪… どうしてよ…」
涙が溢れて、止まらなかった。
私達の高校生活は、荒波にもまれる予感がしていた。
――――…