母が上條君の頬にキスをした。
驚いて固まる上條君の顔が、みるみる赤くなった。
母は笑いながら、仕事に戻る。
私は…
姉ではなく母だと、ますます言えなくなった。
「し、潮音ちゃん、忙しいだろ?
また後でくるな。
仕事、頑張って」
赤くなった顔を見られたくなかったのか、
上條君は逃げるように、ビーチに出て行った。
3時になった。
まだ忙しいけど、母は約束通り、
私と夕凪に「遊んでおいで」と言ってくれた。
それを待ち兼ねたように、クラスメイト達が集まって来る。
体育祭でヒーローになった夕凪は、今は男子からも女子からも人気だ。
嬉しいけど、妬いてしまうのも正直な気持ち。


